『画文』という名のライフワーク
大田垣晴子 画文家

大田垣晴子「『画文』という名のライフワーク」

漫画でも小説でもない、イラストとエッセイが融合した独自の「画文」というスタイルを確立し、日常生活や食文化など、幅広い分野のイラストエッセイを世に送り出してきた大田垣晴子。現在は結婚・妊娠と、たて続けに自身の体験を綴った作品を発表している。この独自のスタイルはムサビ時代、染織家志望の夢をあきらめた後、その代わりに生まれたものだという。

Profile

大田垣晴子(おおたがき・せいこ)
武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン科卒業。画文家。生活体験などに基づく作品で人気を集め、雑誌、広告、新聞などでイラスト・エッセイの連載多数。近著に『オカアチャン1年生―トリペと2』『40歳!妊娠日記』『結婚ゴーラウンド』『日々是反省』などがある。

染織家志望から画文家へ

私は子どもの頃から職人さんの世界が好きだったんですよ。それで高校1年生のとき、得意だった絵を本格的に習いたくなって、軽い気持ちで両親に絵を勉強したいって言ったんです。そうしたら、勧めてくれたところが美大の予備校でした。おかげで高校1年生のときから予備校に通うことになり、必然的に美大を目指すことになっちゃった。

当初は染織家になりたくて工芸科を受験したのですが、最終的に合格できたのは、当時新設されたばかりの空間演出デザイン学科のファッションデザインコースでした。このファッションデザインコースでならテキスタイルの授業などで染織の勉強ができると思い、ムサビへの入学を決めました。ところが、テキスタイルの授業を受けているうちに、どうも自分は地道な作業をコツコツやるのに向かないと思うようになり、染織家になりたいという当初の気持ちは冷めてしまいました。

代わりに熱中するようになったのが、職人さんのレポート。きっかけは一般教養の民俗学の授業でした。織物工場や工芸品の職人さんたちを訪ね、それをイラストと文章でまとめたレポートを提出したのですが、すごく楽しくなって、ほかの課題もこの方法でやるようになったんです。これが、後に私が世に送り出すようになった画文の原型です。

この方法は大学の先生も面白がってくれたのですが、大学外で最初に認めてくださったのは、イラストや映画監督など多彩な分野で活躍されていた和田誠さんです。和田さんが表紙のイラストを担当していた雑誌「話の特集」(現在、休刊)の編集長を紹介してくださり、なんと大学生だった私にいきなり16ページの連載をもたせてくださったんです。プロになるきっかけはこの出来事でした。以来、さまざまな仕事のオファーをいただけるようになり、現在に至っています。

結婚、妊娠と、自身の体験を公開

最近は、東日本大震災の影響で家族愛というものが再評価されているせいか、若者の結婚願望が高まっているそうですね。偶然なのですが、私も最近、結婚エッセイ『結婚ゴーラウンド』と、妊娠中の日記をまとめた『40歳!妊娠日記』を出版しました。

『結婚ゴーラウンド』は、私自身の体験談のほか、挙式準備に関するデータなどをまとめた結婚マニュアルも盛り込んでいます。主人が私より8歳年下のため、結婚当初は周囲からいろいろなことを言われました。私自身も、主人が20代だったこともあり、「すごく若い青年と結婚してしまったな」って思っていましたけど、30歳を超えた今ではただのおじさんかな。出会いは、私が一人飲みに利用していたお気に入りの店に、彼がスタッフとして入ったことでした。楽しくおしゃべりをしているうちに、お店の外でも会うようになって、「私たち付き合ってるんだよね」なんて自然な流れがあったこと、その後同棲もしていたこと、それに対する私の両親の反発がすごくて大変だったこと。いろいろな体験談を盛り込んでいます。

    1. 1
    2. 2
  • next