どうすればお金になるかを考える
西原理恵子 漫画家

西原理恵子「どうすればお金になるかを考える」

実体験に基づいた暴力やギャンブル、夫のアルコール依存症との闘いなど、型破りな人生をそのまま綴った作品で話題となっている漫画家・西原理恵子。近年では『毎日かあさん』、『この世でいちばん大事な「カネ」の話』など、数々の作品が映像化される売れっ子だが、自ら「下手」と評する作品を手に、予備校時代から数々の出版社を回ったという。

Profile

西原理恵子(さいばら・りえこ)
武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。漫画家。『ちくろ幼稚園』(『週刊ヤングサンデー』)でデビュー。数々の雑誌に連載を持つ傍ら、1997年に『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2005年に『毎日かあさん(カニ母編)』で文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞を受賞する。『毎日かあさん』は2009年からテレビ放送、2011年2月には実写で映画化された。

大学受験を目前に父が死去

私は子供の頃、一生男に殴られ続けて終わるんじゃないかと思い、将来に絶望していた時期がありました。日常的な両親の喧嘩、周りの友人の家庭内で繰り広げられる暴力を見てきたから。原因は貧困でした。当時住んでいた高知県の工業地帯のある町では、どこの家庭もお金がなく、切り詰めた生活によるストレスでみんな殺気立っていました。

私は6歳の頃から母が再婚した新しい父と暮らしていました。父は何度も職を変え、浮き沈みの激しい生活を送っていました。そんな父も、事業に失敗して私が19歳のときに死去。亡くなる前日、父はギャンブルで再起をかけようと、3軒あった持ち家のうちの最後に残った1軒を売れと母に迫ったそうです。ところが母は「あれは子供たちにあげるための土地と家だから、絶対に売らない」と、頑として首を縦にふらなかったそうです。そのため、父にひどく殴られ、喪主を務めた母の顔が忘れられません。

ちょうどこの頃、私は高校を退学したものの大検に合格し、大学受験を目前にしていました。ところが葬儀の日、家にどっと押しかけてきたのは債権者たち。彼らに頭を下げ続ける母の姿を見て、心中、大学進学はあきらめるしかないと思っていました。しかし、母は家中からかき集めた全財産のうち、100万円を渡して「これで東京に行きなさい」と言ってくれたのです。これが、決して引き返すことのできない私の第一歩となりました。

ほめられることを知った学生時代

子供の頃からの漠然と描いていた夢は、「絵を描いてお話を作る人になりたい」というものでした。そこで、東京で美術専門の予備校に通い始めたものの、最初の課題でさっそく挫折。私たちが提出した作品は、優秀なものから順に貼り出され、私の作品はというと一番下。クラスで最下位です。予備校で最下位なのだから、美大に受かるはずはないと気付かされました。しかし、私にはいまさら帰る場所なんてありません。そこで、必死にアルバイトで生計を立てながら、自分の描いたイラストを持って何十社もの出版社を回り、絵で食べていく方法を模索していました。

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