オンリーワンであるために
鄭秀和 建築家
「HOTEL CLASKA」、「atehaca」、「amadana」。建築、家電、プロダクト、インテリアと幅広い分野で、独自のデザインを生み出してきたインテンショナリーズ代表・鄭秀和。近年は海外でも高く評価され、バリ、ハワイ、台湾、中国などでビッグプロジェクトを手掛けている。そんな才能あふれる鄭秀和だが、大学時代は必ずしも高い評価を得ていなかった。
Profile
- 鄭秀和(てい・しゅうわ)
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武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。建築家。同大学大学院造形研究科修士課程建築コース修了後、デザインレーベル「インテンショナリーズ」を立ち上げる。日本初のデザインホテル「HOTEL CLASKA」や「ユナイテッド・シネマ豊洲」などの建築デザイン、リアル・フリート社の「amadana」のクリエイティブディレクターを務める。現在は、日本国内のみならず、バリ島、ハワイ、台湾、中国など海外でのプロジェクトも進行中。
建築=建物だけを指し示すとは思っていない
これまでの集大成として今年、オランダのFRAME社から作品集を出すことにしました。96年に会社を設立してから現在に至るまで、ホテルや家具、文具など、さまざまなデザインをしてきたのですが、よく人に「いったい何屋さんなのかイメージできない」と言われてきました。確かに「家具から超高層建築まで」と言われると分からないかもしれません。そのため、今までは会社案内(DVD)の作品を見てもらって理解してもらうようにしていたのですが、この作品集を見ていただくことで、理解してもらえると期待しています。
ムサビの建築学科で学んでいた頃からそうだったのですが、ぼくは建築=建物だと思っていません。もっと大きな空間をイメージしていて、建物もその空間のひとつとしてとらえています。くわえて、ぼくは都市形成に興味をもっており、都市と人との関わりをどうするかということを常にテーマとしてもっています。作品集の最後にも、都市形成にまつわるものが掲載されており、都市と人との未来の姿を記した預言の書のような感じになっています。
現在は、中国・廊坊の都市開発に携わっています。人口は約400万人、面積は東京ドーム30個分くらい。リゾート地のような環境の中でビジネスができる金融街を創造するという命題を頂き、進めています。このほか、政権が変わってから停滞していた台湾でのプロジェクトも、やっと再スタートが決まり楽しみにしています。
現在ないものを創ればオンリーワンになれる
ぼくは常々、「デザインとは意味を創ることだ」と言っています。誰かの模倣ではなく、ちゃんと意味のあるオンリーワンのものでなくてはならない。だから、現在ないもの、もしくは昔あったような気はするけど実際にはなかったものを意識してデザインしています。例えば家電のamadanaなどは、ALWAYS三丁目家電と呼んでおり、どこか懐かしさを感じさせるような造りになっています。