生きる、をつくる。つくる、を生きる。…校友6万5,000名

ムサビは2009年に80周年を記念して大きな催しを行いましたが、当時の学生が「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」というキーワードを創りました。実際、ムサビの学生は心の音を外側に出し、目に見える形で表現していますが、そのことが実は「自分が生きているということ自体を創り上げているんだ」というメッセージを込めています。

また、ムサビは美大としては日本最大規模の校友会を持っており、6万5000名を超える会員がいます。この校友たちは世界各国で活躍していますが、ムサビはこれまで、非常に多くのクリエイティブ人材とアーティストを社会に輩出してきました。そのため、クリエイティブ産業の現場で「誰かムサビの出身者はいませんか?」と聞くと、必ずどこかに校友がいるという状況になっています。ということは、我々の力が弱くなっていくと、日本のクリエイティブ産業が衰退していくことにつながるかもしれません。その意味では、ムサビは日本と世界のクリエイティブ産業を担う責任をもった学校であるといえるでしょう。

ただ、最近は高校などで美術という科目が選択科目になり、芸術という科目の中で美術と工芸と書道と音楽に分かれています。この中で選択するわけですが、それすらも一週間の中で90分というように短縮されています。現在はこういった波が小・中学校まで押し寄せていますが、この状況に私は大変憂いています。このままで日本の文化は大丈夫でしょうか。文化というものを理解する素地、素養というのはどうなっていくのでしょうか。そう考えていくと、大変怖くなっていきます。

世界のムサビへ…これまでも、これからも「グローバル人材育成」に挑む

ムサビは4年前、日本の美術大学のなかで初めて「グローバル人材育成推進事業」に採択されました。その一環で今年、ムサビは「グローバルキャリアデザイン」という授業を始めました。また、ムサビのグローバル特設サイトにある「グローバル人材育成プログラム」のビジョンには、『世界で活躍するために必要な「15」のこと』というものが掲載されています。ここにはグローバル人材に必須となる能力について書かれており、そのビジョンのもとでグローバル人材の育成に挑んでいますが、そのなかで英語力重視型公募制入試を実施したり、英語による専門科目を増やすといったことを行っています。

さらに、独自の教育プログラムで世界をリードしていくことにも取り組んでおり、2014年には「グローバル・デザイン教育フォーラム2014東京」を開催しました。このときは、協定校を中心にムサビを含め世界の5つの大学から教授陣が集い、グローバル・デザイン・イニシアティブ・ワークショップ実施の合意を実現し、初回を今年、シンガポールで実施しました。また、現在もムサビが開発した教育ノウハウを世界へ輸出しています。ムサビは、このノウハウを惜しむことなく提供することこそがグローバルの原点であると考え、そうすることによって私たちが総本山となり、世界をリードしていけると考えています。

同時に、ムサビを卒業した学生には、海外の美大大学院への留学をすすめています。そして、提携する大学は基本的に1都市1大学、その国の一番有名で一番レベルの高い大学を優先し、きちんと交流を行う事が前提となっています。ですから、むやみに提携校を増やすようなことはしません。それでも現在は約30校と提携しています。

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