株式会社三越伊勢丹ホールディングス
ライフスタイルの提案は、ムサビでの学びに通じる
髙橋弥(工芸工業デザイン学科卒業) × 窪田早紀 (工芸工業デザイン学科卒業)
窪田さんの思い出深い仕事はなんですか?
窪田 三越伊勢丹には食品や婦人服、リビング系などいろいろな商品があり、それぞれに営業部があります。私は食品や呉服などを担当していて、いまレストラン営業部のカタログを手掛けているのですが、この仕事は単純にお店を紹介するだけでは伝わらないことが多いので、厨房のシェフのインタビューや、外部の料理家の記事を載せるなど、さまざまな工夫をしています。また、2月にはバレンタインのチョコレート商線が始まって、どの百貨店でもこの時期はチョコレートが最も売り上げの上がる商品になります。そのため、力の入る仕事になるわけですが、こういったシーズンもののカタログを制作したりしています。
そういった制作物に携わるなかで、最も苦労することはなんですか?
窪田 いろいろありますが、例えば撮影場所の確保で苦労することがよくありますね。百貨店ですから専用の撮影スタジオなどは持っていません。ですから、シェフに作っていただいた料理を撮影するときでも、お客様が通らないスペースを見つけ、そこで撮影したりするのですが、すごく暑い場所で汗まみれになっての撮影ということもあります。アイスクリームを撮っているうちにどんどん溶けてしまったりとか(笑)。
髙橋 撮影に関する苦労話は私にもたくさんあります。先日、ファッション系のハイブランドを集めたカタログ「EXCELLENT WOMAN」というものを制作したのですが、その撮影場所にムサビを選んだんです。ムサビの建物はすごく美しいんですよね。もともと、ムサビに関係の深いフォトグラファーやアートディレクターと打合せしていたとき、「建築」と「ハイブランド」を掛け合わせて表現したカタログを作りたいねと話していたんです。そのとき、文化勲章を受章した建築家で、ムサビの校舎を設計した故芦原義信名誉教授の話になり、あんなに素敵な校舎があるのだからぜひ使おうよという話になったんです。それで、久しぶりにムサビへ行ったのですが、あらためて見ると、すごくいい環境だったんだなと思いました。学生はそんなことに気づかずに通学しているかもしれませんが、ぜひ、意識して見てほしいですね。
では、最後に学生へメッセージをお願します。
髙橋 ムサビに限らず美大生はつねに社会へ提案できるものをいっぱい創っているんです。グラフィックでも金工でも木工でもテキスタイルでも、それぞれの垣根を越えて一緒に取り組むことでライフスタイルをトータルで提案することが可能です。これは、もしかしたら「ムサビ」という新しいブランディングができるかもしれないと思うんです。また、企業とコラボレーションして、なにか新しいものを創り出すということが可能かもしれません。ですから、その可能性に気づいてアクションを起こすような人がムサビから出てきてほしいと期待しています。
窪田 学生時代というのは時間がたっぷりあるので、興味のあることは全部やっておくべきです。また、学内にいるだけでも十分に楽しいですが、外の世界も見てほしいですね。課題をやって技術を磨くことも大事ですが、外の世界にも大事なことはいっぱいあります。そこで経験したことが自分の引き出しにもなります。ですから、たっぷり時間があるうちに好きなことをどんどんやってほしいです。
髙橋 学生たちにはこのマウジンを見てほしいですね。社会で活躍している先輩たちがこんなに紹介されているのですから、気になる先輩がいたら会いに行けばいいと思うんです。そのくらいの行動力はほしいですね。ぜひ、マウジンに会いに行ってください。