トヨタ自動車株式会社
いろいろな素材に触れ、刺激を受けた学生生活
佐藤一寛(工芸工業デザイン学科卒業) × 加藤舞 (工芸工業デザイン学科卒業)

Profile

佐藤一寛(さとう・かずひろ)
2004年トヨタ自動車株式会社入社。研修を経て、トヨタデザイン部へ配属、エクステリアデザイナーとしてキャリアをスタート。ハイランダーのリアコンビランプ、リアまわりの部品を手がける。また、RAV4マイナーチェンジではフロントバンパーを担当。 2008年アイデア創出に特化したグループ、トヨタクリエイティブスタジオへ異動。ヴィッツ、ハリアーなどの初期アイデア開発を担当。2012年トヨタデザイン部へ異動。現在に至る。
加藤舞(かとう・まい)
2005年トヨタ自動車株式会社入社。研修を経て、カラーデザイン室へ配属、カラーデザイナーとしてのキャリアをスタート。車両の内外のトータルカラーコーディネートを手がけヴィッツのマイナーチェンジや北米向けブランドScionのクーペモデルtCのモデルチェンジを担当。2009年よりニューヨークプラットインスティテュートへ社内研修プログラムを利用して留学。2010年に帰国後、プジョー・シトロエンとの共同開発の欧州専用車種AYGOのモデルチェンジや、グローバルプロジェクトであるカムリ等を手がける。2013年より現在のカラー戦略や先行開発を行うチームに属し、2013年東京モーターショーではJPNタクシーを担当、出展した。

トヨタ自動車株式会社の佐藤一寛さん(工芸工業デザイン学科卒業)と加藤舞さん(工芸工業デザイン学科卒業)。
入社のきっかけとなったのはムサビ時代の、人との「出会い」と「言葉」だったというお二人。ムサビでさまざまな素材に触れる機会に恵まれたことはどのように仕事に活かせているのかお聞きした。

ムサビ時代の思い出として残っていることはありますか?

佐藤 一番の思い出は、所属していた自動車研究会というゼミで、2年に一度ドイツで行われる自動車のデザインコンペに参加したことです。このコンペはドイツの雑誌社が主催したもので、私が参加したときは日米独英豪中の6カ国の大学生がそれぞれのテーマに合わせた作品を提出し、プレゼンをしました。海外の同世代の学生たちが造った完成度の高いモデルやスケッチを見たときの衝撃は忘れられません。それまで、インターネットを通じて見ることはできましたが、やはり実物を見ると感じ方がまるで違いましたし、モデルもすごく丁寧に造られていて、世界のレベルというものを実感しました。おかげで、モチベーションもすごく上がりましたし、このときから自分の進むべき道がはっきり見えてきました。

加藤 私はムサビ時代、自分のスタイルも見つからず、あまり評価されなくていつも試行錯誤しているような学生だったので、「できなかった」という経験のほうが印象に残っています。私の在籍していたテキスタイル専攻はアート系とデザイン系のカリキュラムがあるのですが、デザインを志してきた私は、アート系のカリキュラムで出された課題で、何を作ったらいいかまったく分からず、最終的には紐のようなものになってしまったという苦い思い出があります。「テキスタイルアート」という課題だったのですが、本当に何をやっていいか分からず……。毎日糸を少しずつ染め、編んでいったのですが、まったく自分の思い通りにならなくて、結局、3メートルほどの長さの紐になっていました。先生には「織ってみれば」などアドバイスをいただいたのですが、自分がなんとなく思っていた方向とは違ったので、結局従わず、あとですごく後悔しました。

――プレゼンテーションをしなければならなかったのですよね?

加藤 そこが私の得意とするところでして、なんとなく作品に意味を見出し、プレゼンテーションは乗り越えました。ただ、評価は最低ランクではなかったものの、決して良い評価をいただけたとは言えません。でも、その時アートに挑戦したことも、やらずに後悔したことも、今の自分につながるとても貴重な学びであったと感じています。

――印象に残っているようなユニークな課題はありますか?

佐藤 1年次のプロダクトの授業で、建物の2階から生卵を落としても割れない工夫を考えるという課題がありました。これは、サイズの決まった紙を使って生卵を保護して割れないようにすることが課題だったのですが、パラシュートを作るなど、各自いろいろな工夫を施したものの、私も含めてほとんど成功しませんでした。

加藤 ユニークな課題といえば、「体を動かそう」というテーマで、裸足で構内を駆け回るというワークショップがありました。目隠しをしたり、階段でもみんな寝そべって転がり落ちたり。体を上手く使えば転がり落ちても痛くないとか、構え方ひとつで状況が変わるといったことを体験するものです。柔軟な姿勢をもつことで周りの環境の捉え方が変わり物事がよい方向へ進んでいくことにハッとしました。

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