トヨタ自動車株式会社
いろいろな素材に触れ、刺激を受けた学生生活
佐藤一寛(工芸工業デザイン学科卒業) × 加藤舞 (工芸工業デザイン学科卒業)

――そういったアイデアを考えるうえで、ムサビでの学びで役立っていることはありますか?

佐藤 夏休みと冬休みに100枚スケッチという課題があり、車でも家電でもなんでもいいのでとにかく100枚描くというのがあったのですが、日数も限られていますから、大変でした。先生が「描けば描くほど上手くなる」とおっしゃっていた通り、数をこなせばコツもわかってくるし、スピードも速くなるんです。今の仕事でも期限が限られているなか、ベストな提案をしなければならないという状況があり、スピードやデッサン力というのが必要になってきます。そういうとき、大学時代に特訓したことがすごく活きていると感じています。

そういった制作物に携わるなかで、最も苦労することはなんですか?

加藤 課題などを出されるとき、通常は3週間ほど期間を与えられるのですが、途中で中間チェックはあるものの、基本的にその期間をどう使うかは自己責任です。そのため、自分自身のマネジメント能力が必要になります。現在の仕事でも、カラーデザイナーの仕事はチームというよりも、個人ですべてをコーディネーションしながら進めて行くことが多いので、大学時代に培ったマネジメント能力が活きていると思っています。

また、ムサビ時代に出会った仲間や教授との触れ合いで学んだことは、自分のなかですごく大きな財産になっていると思います。美術のことはもちろん、音楽だったり、おいしいご飯の食べ方だったり、お酒の飲み方だったり、本当にいろいろなことを学び、刺激し合って成長できたことが一番良かったことですね。

佐藤 そうですね。1、2年次にいろいろな素材に触れられたことも、すごく今に活きています。プラスチックだったり金属だったり、木だったり、いろいろな機会を与えて知識を深めていくのが、工芸工業デザイン学科の特長だと思います。

――では、最後に現役のムサビ生にメッセージをお願いします。

佐藤 会社に入ると仕事に費やす時間が多くて、自分を磨く時間や自分のことをする時間は限られてしまいます。だからこそ、自分の時間がたっぷりある大学時代は貴重で、この時間を無駄にすることなく、いろいろなことを経験してほしいです。とくにムサビはいろいろなことを経験できるチャンスが多く、違う学科のことを学べたり、そのための材料も揃っていて、本当に何でもやりたいことができると思います。その点、私はムサビ時代を楽しみ損ねたと思うのですが、みなさんは存分にムサビを使い、楽しんでほしいです。

加藤 私はムサビに入ったことにより、もしデザイナーにならなかったとしても世の中にあるさまざまなモノについて、その善し悪しを理解する「目」を持つことができたと思っています。この「目」は就職において、デザインに直接関わる仕事でなくても役立つと思います。また、モノの善し悪しだけでなく、ムサビは倫理観なども含めて学べる場があり、例えばひとつのアートを見ていても、技法、素材をはじめ、誰がどういう感情で何を表現したものなのか、作品に込められたすべてのものを学んでいきます。現在は、インターネットで簡単に情報が入り、すぐに分かった気になってしまいますが、仲間と共に実際のモノに触れながら学ぶと、大きなショックを受けたりすることもあります。その分、刺激し合いながら成長でき、すごく有益な時間を過ごすことができると思います。

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