宮島慎吾インタビュー

EDS竹の特性を生かし、
先進国向けの日用品を開発しよう
基礎デザイン学科/宮島慎吾 教授
プロダクトの企画からコンセプト・スタイリング、流通やプロモーションまでのプランニングワークをテーマとする。近年、日本各地の地方自治体とのブランド及び商品デザインの研究を中心に活動。
 

地球環境とデザインを絡める
私には以前からプロダクトデザインを通じて地球環境にどう貢献できるのか、という命題がありましたが、日々活動する中ではそのようなプロジェクトに参加する機会がありませんでした。たまたまEDS研究所の社長である石井さんと知り合い、EDS技術が木材を有効材に改良する点や、また日本の技術であるという点も含めて、世界に対してどうにか展開できないかと考えていました。そうこうする内に機が熟してきた感がありまして、地球環境とデザインを絡める一つのポイントとして竹を設定しました。竹という素材は生育が早く、未だ量的な有効利用はされていません。その竹とデザインを絡めることで様々なかたちでの展開ができるのではないか、という思いがありまして本プロジェクトをやろうという意思が芽生えました。
プロジェクトで対象とする範囲としては広いのですが、私を含め4人の教員が参加することで色々なプロジェクトが可能です。どこまで成果を出せるかは別としても、試みとして展開を広げられるイメージができたのです。身近にドームを研究されている板東先生がいらっしゃり、アフリカで実際デザイン指導をされていた伊藤先生もいらっしゃいました。学内でプレゼンした際に建築学科の宮下先生も参加を希望してくださいました。結果としてそれぞれ特徴のある分野の方々が揃ったのです。

どうやって市場に繋げていくか
学生には竹という素材をきちんと見つめて欲しいと思っています。竹は日本にも数多くの種類がありますし、世界を含めるとかなりの数に上ります。その竹を自分の手を使って触り、削るといった中で、具体的にものづくりとして体験してもらいたいと思っています。また、それだけではデザインにならないので現代の生活にフィットするもの、あるいは製品、最終的には商品という段階を経て市場へデビューするまでを意識したデザイン演習を展開したいと思っています。ですから学生達は制作するものが本当に生活者にうまく使われるのだろうか、というところを見据えながら作品を完成させて欲しいのです。ものをつくるまでは一人の思いでできますが、その後市場へデビューできるのかという点が重要ですので、そこまでどのように繋げていくのか考えながら学んでいく必要があります。
私の授業では日用品、雑貨を範囲とします。後期からの授業に関しては、今のところパイロットを制作しています。例えばジョイント部分、薄さによる強度や特性の違い、表皮を残した場合と残さない場合の強度の違い、といったことを実験中ですので、これらの結果を資料として揃えておきます。後期からはまず、どういうユーザーに向かって、どういうアイテムを、どういうコンセプトでつくっていくのかというリサーチを含めた議論を行います。それらをスケッチや図面を含めて二次元の世界で検討した上で、できるだけ早くEDS竹という素材を使ってものづくりをします。試行錯誤をくり返し12月には作品を各自仕上げて、それを3月に現地にもっていき展示・提案をします。その中で提案の背景などを説明したカタログも作成する予定です。ただものを置くだけでなく、きちんとメッセージを伝えるところまでやっていきたいと思っています。地球環境全体を考慮した上で竹という素材に焦点を絞っているのですが、その背景には環境問題、南北問題などなど様々な問題があり全てが繋がっているということを、学生の皆さんには認識してもらいたいですね。また、先ほども言いましたが自分の気に入ったものだけをつくるのではなく、どうやって市場に展開していくかということまで意識して欲しい。

豊かな生活の発展に貢献
このプロジェクトでは3学科が同時に取り組んでいますが、そのこと自体が画期的なことだと思います。それが良い結果を得られたら、教育としても注目を浴びるでしょう。一方で作品としてでてきたものが、一人歩きして注目されるような展開になれば良いと思います。そしてそれがスタンダードとなることで人々の意識の中に新しい素材としてEDS竹が認識され、今後生活の中で様々な分野に活用されるようになったらすばらしいと思います。それによって世界の竹を資源として利用できる地域の人たちが、経済的に自立するのを手助けできます。それはEDS竹のデザインをすることが、豊かな生活の発展のために貢献できるのだということを学生達にも意識してもらいたいと思います。私たちデザイナーはアーティストではありませんから、実際の生活に使えるものをつくることが重要だと思います。またつくるうえで無駄をしない、石油製品を大量に使用しないものづくりをすることを意識しなくてはいけません。