株式会社 明治
デザインを学んだ学生の未来に広がる可能性
斎藤茂信(視覚伝達デザイン学科卒業) × 鈴木修 (基礎デザイン学科卒業)

株式会社 明治の斎藤茂信さん(視覚伝達デザイン学科卒業)と鈴木修さん(基礎デザイン学科卒業)。数々の商品ブランドを支えるデザイン企画部では、パッケージデザインを戦略的に進化させながら、商品をより魅力的につたえる業務に携わる。
日常に根差したこれらのデザインはムサビ時代に学んだことがどう生かされたのか。社会に出てからムサビの卒業生としてどのようにデザインに向き合っているのかお聞きした。

おふたりが携わる株式会社 明治の商品

――美大で学んだことについて、世代間の違いを感じることはありますか?

斎藤 私が卒業してから科目が増えましたよね。その意味では、美大で教える領域が増え、多様化しているのではないでしょうか。

鈴木 斎藤さんと私の頃というのは、まだ携帯電話やインターネットが普及していなかった時代です。その点では、私や斎藤さんの後とその前では大きく変わっているのかもしれません。

斎藤 いや、わたしたち二人の間でもかなり違うと思うよ。私の頃はMacなんてなかったですから。

鈴木 確かにそうなのですが、私がムサビに在学中でも、制作はまだアナログ的な要素が多かったですよ。

――近年、マーケティングにおけるデザインの重要性高まっていると感じますか?

斎藤 基本的には変わっていないと思います。私が就職した当時から商品のスペックでの差別化というのは難しい時代になっていました。「わたしたちの商品はここのスペックが突出して優れている」「こういう技術革新がある」といった商品を世に送り出すのは簡単なことではないため、その中でいかにお客様に対して魅力的に感じてもらえるかが重要なことに変わりはありません。

鈴木 私はパッケージ(デザイン)に対する要望はますます高まっていると感じています。メディアが多様化し、以前のテレビのように大多数の人が接触するものが少なくなってきた今、企業とお客様とが接する基本はやはり商品そのものだと思っています。そういう意味でもパッケージデザインの重要性は今後ますます高まっていくと思っています。

――明治に入社して最初に感じたことは?

斎藤 入社して数年はなかなか会議に呼ばれませんでした。例えば、新しい牛乳の開発を進めているとき、関係者を集めて定期的に会議が行われたのですが、私も牛乳担当なのに会議に呼ばれないんです。なぜなら、パッケージデザインにまで話が及んでいないから。その時「それってちょっと違うだろ」と思いましたね。私がデザイン事務所でも広告代理店でもない、メーカーに就職したのは、ものづくりの現場に携わりたかったからなんです。だから、デザインのことしか分からない専門家として扱われることにすごく抵抗感を感じました。いまでは、私がこれまで意識的に参加したこともあり、呼ばれるようになってきましたが、当時はすごく悔しかったです。

美大出身者は、「俺は美大出身なんだ。人とは違うんだぞ」といった意識をもって卒業してしまう傾向があるのではないでしょうか。これはよくないことだと思っています。美大出身者は、自分には特別な存在価値があり、一般的な共通言語(価値観)で喋る必要がないと思い込んでしまう。ですが、例えばイラストレーターになった場合、そのイラストがどうすれば売れるかと考えた瞬間に、それはマーケティング活動になるわけですよね。美大生には総合大学の出身者とは違う自負も必要ですが、社会での共通言語の大切さも学ぶべきだと思います。

鈴木 その通りだと思います。企業にはいろいろな大学の出身者がいて、経済を学んだ人や経営を学んだ人など、さまざまな人が同じ目的に向かって仕事をしているわけですから、デザインのことだけでなく、あらゆることを理解していなければならないと思います。私も弊社の就職面接のとき「うちの会社でデザインの仕事がなかったら?」と聞かれたですが、そのとき「デザインは紙の上だけのものでなく、日常生活のさまざまなものと密接な関係をもっているので、デザインを学んだことが生きる場はたくさんあるはず」と答えました。

    1. 1
    2. 2
    3. 3
  • next