株式会社 明治
デザインを学んだ学生の未来に広がる可能性
斎藤茂信(視覚伝達デザイン学科卒業) × 鈴木修 (基礎デザイン学科卒業)

――思い入れの強い商品(デザイン)はありますか?

鈴木 「いちごオレ」や「フルーツオレ」は私が入社して早々に手掛けた商品なので思い入れが強いです。

斎藤 昔からあるフルーツ系の乳飲料です。デザインも昔風で現代っぽくはないかもしれません。このような商品は、昔懐かしの味を今の時代にどう伝えていくかということが、マーケティングの中で大切なテーマになっているんですよ。

鈴木 この商品について詳しい話を聞いたときに一番驚いたのが、ターゲットが男性だということ。デザインや味のイメージから女性の飲料として認識していましたからびっくりしました。

斎藤 コンビニでも販売している商品ですから、来客数の男女比で男性が圧倒的に多いことが大きな要因ですね。そもそもこの商品を飲んでいるシーンを思い浮かべると、部活帰りの中学生が500mlを100円で飲めるというお得感で購入していただき、帰宅しながら飲んでいるというイメージが浮かびませんか。

鈴木 だからといって男性っぽいデザインがいいというわけではないですからね。この商品に関してはみんな懐かしさのようなものを感じると思うのですが、そういった想いも裏切るわけにはいかないし。だから、心地よい落としどころはどこか、試行錯誤した思い出があります。

――デザインによって、売り上げが大きく変わったというようなことはありましたか?

斎藤 もちろんあります。ただし、それはグラフィック的に美しくなったとか、おしゃれになったということよりも、パッケージデザインでお客様への訴求ポイントが分かりやすくなり、それがお客様に受け入れられたようなケースが多いですね。デザインというと、どうしても画の美しさや格好よさという話になるかもしれませんが、キャッチコピーなども含めて「私はこういう商品ですよ」というものが表現されていなかったら、どんなに美しいデザインでも、店頭では全く手に取っていただけません

鈴木 デザインだけでホームランというのは難しいですね。マーケティングも含めてトータルで考える必要があります。

――デザイン企画部の役割として重要なことは何ですか?

斎藤 私たち自身はデザインを描き起こしたりしていません。実際のデザインは外部のデザイナーさんにお願いし、我々はプロデュースするのが仕事です。

鈴木 社内で自らデザインしているわけではないので、デザイン事務所などへ仕事を依頼するわけですが、優秀なディレクターやデザイナーに担当していただけると、実は私たちの存在価値がなくなってしまう可能性だってあるんですよ。

斎藤 極端なことをいえば、私たちはオブザーバーとして座っていれば、ことがどんどん進んでいくということだってあり得ます。例えば、開発部の担当者がその商品に対する想いをデザイナーさんに伝えて、何かしらデザインができてしまえば、それはそれでことが進んでいくわけです。しかし、それでは意味がないわけですから、デザイン企画部としてどう関わっていくかということは、常日頃から考えています。

だから、私は鈴木も含めて「商品の生まれてきた背景、どんな戦略や事業性をもっているのかといったことをちゃんと理解し、それをデザイン戦略に置き換えて自分の言葉でオリエンテーションできるようになれ」と言っています。

鈴木 私たちの存在意義ですよね。思考を停止し、言葉で表現できなくなったら、わたしたちは必要なくなります。その意味で、仕事自体にはおもしろみを感じますし、やりがいもあります。

パッケージに対しては社員みな思い入れがあり、意見しやすいというのではと感じています。逆にもっとどんどん提案してもらって、盛り上がっていくと楽しいですね。

――外注先のデザイナーの中に、ムサビ出身者と出会うことはありますか?

斎藤 もちろんありますよ。ムサビって聞いたとたんに先輩面になっちゃったりして(笑)。相手はやりづらくなることがあるかもしれませんね。

鈴木 同じムサビ出身ということで意気投合し、相手のモチベーションが上がってよりがんばってくれるということもあります。

斎藤 そういうのは、いいね。デザイナーのモチベーションを上げることも我々の仕事のひとつだから。

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