株式会社リクルートコミュニケーションズ
クリエイティブの力を信じ続けること
萩原幸也(デザイン情報学科卒業) × 渡邉洋治郎 (基礎デザイン学科卒業)

――現在、お二人はマーケティングの最前線にいるわけですが、ITの進化によりマーケティングのあり方も多彩になってきました。それだけマーケティング戦略の幅が広がるわけですが、逆にそれをどう使いこなせばいいか、難しくなった部分もありませんか?

萩原 確かにWEBのコミュニケーションが主流になり、アドテクノロジーの活用、SNSなどを利用したコミュニティーの構築など、いろいろ考えることが多くなってきました。より、商品を通してどういう体験をして頂くかという原点をもっと深く考えないといけないと思いますし、ブランドのタッチポイントが増えた分、われわれのような職種の果たせる役割がどんどん大きくなってきているように感じます。

渡邉 コミュニケーションツールが増え、ぼくたちの介在できる範囲も飛躍的に増えているからこそ、たくさんニーズもあり、課題もあり、新しい視点でチャレンジできる機会も増えています。これは、クリエイティブに従事する人間としては非常におもしろいことだと思っています。

――そういう状況のなかで、これからを担う若いデザイナーに求められることは何だと思いますか?

萩原 グラフィックデザインを突き詰めて考えている人、WEBコミュニケーションを突き詰めて考える人など、専門分野を極めていく人も必要なのですが、今はプロジェクト全体を俯瞰して考えられるクリエイターも必要とされているように思います。なぜ、ブランディングが必要なのか、なぜSNSに力を入れないといけないのか? このサービスのデザインはこうでなくてはいけないんだということを、しっかりとしたロジックをもって言える人があまりいないように思います。この役割を担うのは必ずしも美大出身者でなくてもいいわけですが、ぼくはそういうことも考えられる美大出身者の存在価値は高いと思うんですよ。だから、ぼくも含めて自分の枠をもっと広げて考えていかないといけないかなと思っていますし、学生も「これは自分の専門外のことだ」とか、取捨選択をあまりせずに学んでほしいですね。もちろん、専門分野を極めて名をはせていく人もいるわけで、そういう人のことを非常にリスペクトしていますが、全体を俯瞰しながらプロジェクトの方向性を決めていくとき、その中心にデザインのことやクリエイティブのことを理解している人間がいてほしいですね。

渡邉 そうですね。ただ、これは逆のことになるかもしれませんが、要は「餅は餅屋」だと思うんですよ。だから、自分の専門分野の強みはちゃんと持ちつつ全体を俯瞰しながら、それぞれの分野のスペシャリストの役割分担を整理し、ゴールに向かってプロジェクトを動かせるような人は強いと思いますね。やはり、同じグラフィックデザイナーでも、今なぜここにグラフィックデザインが必要なのかということをしっかり説明できる人は、一流のデザイナーだと思います。

――では、最後にこれからムサビを目指そうとしている人、今ムサビで学んでいる学生へメッセージをお願いします。

渡邉 情報があふれているなか、常に「なぜそうなの?」とか、「それって何なの?」というギモンを大事にしてほしいと思います。今の仕事でもそうなのですが、「これをなんで作るの?」、「これって何のためにあるの?」とか、「あなたはどうしたいの?」と、問われ続けます。ですから、常にギモンに持つということを大事にし、自分なりの答えも持ち続けてほしいです。また、クリエイティブの力というものを最後まで信じてほしい。今の世の中、クリエイティブの価値を説明するのは非常に難しいですし、なくてもいいような場面もあります。しかし、それがないと文化そのものがなくなってしまうし、その人にしかできないクリエイティビティが非常に貴重な存在になることがあります。ぜひ、そういう力というものを疑わないで、信じてやり続けてほしいです。

萩原 ぼくが言いたいことも、クリエイティブの力を信じてほしいということです。ぼくたちのリリースしているサービスは、世の中に必要なものだと信じています。でも、それをどう伝え広めればいいか、どんなブランドに育てていけば良いのか悩ましいときがあります。そんなときに課題を乗り越えられるのがクリエイティブの力です。これは絶対に必要なものです。学生のみなさんには、これから自分がやっていく事を信じ、その可能性に誇りを持ってほしいです。

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