株式会社サンリオ
楽しい学生生活から、「好き」が仕事に
間所直子(商業デザイン専攻卒業) × 室橋綾 (空間演出デザイン学科卒業)

株式会社サンリオの間所直子さん(商業デザイン専攻卒業)と室橋綾さん(空間演出デザイン学科卒業)。ハローキティをはじめとする、子供から大人にまで愛されるサンリオのキャラクター商品の開発に携わる。
ムサビ時代はとにかく「楽しかった」と話すお二人。サンリオではその楽しかったムサビでの経験がどのように活かされているのか、キャラクタービジネスの魅力と未来についてお聞きした。

おふたりが携わる株式会社サンリオの商品

――どのような理由で学科を選びましたか?

間所 私は受験勉強をしているときから、横尾忠則さんや山口はるみさんなどの活躍に憧れて、グラフィックデザインを学びたいと考えていたので、商業デザイン専攻に絞っていました。

室橋 私はもともと舞台やファッションが好きだったので、そういう「好き」がいっぱい詰まったのが空間演出デザイン学科でした。

サンリオを選んだ理由も、「好き」という気持ちを優先したからです。ムサビには舞台やテレビのセットを作りたいと思って進学したのですが、就職活動をしていくうちに実際の仕事内容はガテン系だということがわかり、想像していたものとはちょっと違うかなと……(笑)。

私の世代は大人になってもずっとキティにときめいている世代なんです。幼少のときに第二次キティブームがあり、小学校高学年の頃からは少しキティ熱が冷めたのですが、高校生の頃にティーン向けのキティがブームになり、ナースキティなどに夢中になっていました。大学生になるとキャメロン・ディアスやパリス・ヒルトンらキティファンの海外セレブの影響でキティが再評価され、ずっとキティが身近な存在でした。

――間所さんとしては、まさにしてやったりという感じですね。

間所 本当にそうですね。ナースキティに関しては、私にとっても思い入れの強いシリーズのひとつです。

当時、高校生の間で「清潔」というキーワードが注目されていて、世間でも抗菌という言葉が広く使われるようになっていた頃でした。そこで、清潔や抗菌といったものをキティで表現しようと、赤やピンクという固定概念のあったキティを清潔感のあるブルーで表現するなどの冒険的な商品を開発し、高校生の皆さんにあっという間に広がりました。

室橋 それまでキティというのは子供のものというイメージだったのですが、自分たちの年代の感性にマッチしたキティが出たことで、キティは可愛いキャラクターというより、私たちの生活に密着したアイコンというように認識が変わったように感じます。

――子供のものというイメージから脱するのは大変ではなかったですか?

室橋 間所と一緒にティーン向けブランド「Vivitix」の開発を手掛けていた時期があるのですが、そのときも「可愛い」から「格好いい」にするにはどうすればいいかを日々考えていました。例えばキティは猫のフォルムになっていて、それだけで可愛いさが出てしまうので、クールなイメージの豹柄を使ってバッグをデザインしました。可愛らしさと豹柄のギャップがオシャレになったと思っています。

間所 女の子というのは、子供の頃に愛したキャラクターのことはずっと愛しているし、いくつになっても可愛いものが好きだと思うんです。だって、癒されるじゃないですか。キャラクターの存在価値は癒しだと思うんですよね。キティはその癒しのシンボルのような存在だと思っていて、一度離れることがあっても、世代に合わせてファッショナブルに生まれ変われば、また欲しいと思うんじゃないでしょうか。そういうアプローチを室橋と一緒に考えていました。

――間所さんはVivitixの立ち上げにも携わったそうですが、商品開発で苦労したことはありますか?

間所  メーカーとの交渉に苦労しました。サンリオは工場を持っていないので、外部のメーカーに制作をお願いするのですが、サンリオの商品というのは世界のすみずみまでお店があるので、一つの商品を一気に数千から一万個ほどオーダーするんです。ところが、Vivitixは店舗数が少ないので、数百程度しかオーダーしません。ですから、メーカーの担当者には無理なお願いをしました。

室橋 しかも、すごく凝った仕様のものだったりしたので、お願いしづらかったですね。例えば、ポーチの表面に透明のビニールカバーを敷き、その中にキティのぬいぐるみを入れたり。

間所 でも、企画する人は企画部、販売する人は販売部など担当部署がハッキリ分かれている通常の流れと違い、Vivitixは小さな組織で運営していたので、企画と販売現場の間での情報交換がスムーズだったのはよかったですね。おかげでお客様の意見がダイレクトに入ってきて、その情報に合わせて商品を開発することができました。

室橋 私は現在、特殊店舗の商品開発を担当しているので、Vivitixでの経験を活かすことができています。

――特殊店舗の商品開発とはどういうものですか?

室橋 東京スカイツリータウン® や成田空港のお土産屋さん、百貨店の期間限定で開かれる特設コーナーといった特殊な店舗で販売される商品です。この商品開発にはVivitixと同様に、販売現場から上がってくるお客様の意見を大事にしています。例えば通常のキティではタブーとされていた紫をあえて使ったプチタオル。これは東京ソラマチ® で売られているものですが、営業部から客層は通常のサンリオショップより年齢が高めだと聞き、その年代の方に好まれるカラーを調べていった結果、紫と黒という組み合わせになったんです。

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