株式会社サンリオ
楽しい学生生活から、「好き」が仕事に
間所直子(商業デザイン専攻卒業) × 室橋綾 (空間演出デザイン学科卒業)
――ムサビ時代に学んだことで印象に残っていること、商品開発に役立てられていることはありますか?
室橋 ムサビの良いところは、人を楽しませることや楽しいことが好きな学生が集まっていて、教授も楽しいことに寛大だということです。そんなムサビの授業で印象に残っているのは、専門領域外の造形力を養うカリキュラム「共通絵画」でのことです。
そのとき出された課題は、紙に描くということに縛られず、どんな形でもいいからモデルさんの人体を表現しなさいというものでした。私は人体をデッサンするということはモデルさんの空間をどんどん切り取っていくということなので、ゼリーを食べている行為に似ていると思ったんです。そこで、巨大な寒天で人体を作り、「これを食べるところまでが作品です」と言って提出しました。しかし、外で作ったために作品(寒天)の表面にはゴミがいっぱい付いていたんですよ。だから、教授も「これ、俺が食べるのか? 衛生的にどうなんだよ~」と言いながらも、ちゃんと食べてくださいました(笑)。
ムサビには自由でユニークな発想を受け入れ、さらにその発想を次につなげるにはどうすればいいかアドバイスしてくれる教授がいたので、何も恐れることなくいろいろなことにチャレンジすることができました。今、サンリオで商品のデザインを考えるのも「人を楽しませたい」という気持ちが原点だと思っています。ムサビ時代にその原点に基づいて、さまざまな経験をさせてもらったことがすごく役立っています。
間所 ムサビは教授だけでなく、学生も型破りで個性的な人が多いですね。私の時代もそういう人が多くて、自分がすごくノーマルな人間に感じちゃいました(笑)。「どうしよう。おいてかれる!」と焦っていたので、写真なら写真、グラフィックならグラフィックの得意な先輩に作品を見せていただいたり、特別講義をしていただいたりして、なんとか創造力のたくましい人たちについていこうと、必死でがんばっていました。ですから学内にいるだけで刺激があったし、自分のレベルを引き上げてくれるような環境がありました。
室橋 ムサビに入ると日常が非日常と言われるのですが、普通に登校しただけで全身トイレットペーパーが巻かれたミイラマンに遭遇したりするんですよ(笑)。おもしろいことが日常にあるので、何でも怖がらずにチャレンジするといったムサビ魂のようなものが磨かれていくと思います。
――ムサビでの大学生活はすごく楽しかったようですね
間所、室橋 すっごく楽しかったですよ!
室橋 私は競技ダンス部に所属していて、ある年の夏合宿で本気の肝試しをやったのですが、美大生の本気って本当にスゴイんです。あのときはドラえもんがテーマだったので、すごく怖いリアルなドラえもんを作りこんだり、私はしずかちゃんに扮してものすごいメイクをしました(笑)。
――そんなに楽しい大学を卒業するのは寂しかったでしょうが、就職活動はどうだったでしょうか?
間所 私が就職した頃は、今の学生さんには申し訳なく思うほど苦労はなかったですね。当時は最初に入った会社になじめなくても、どんどん転職しながらランクアップしていけばいいと考えられていた時代だったので、危機意識もあまりありませんでした。実際、私ははじめ広告会社に勤めていました。広告会社のときはクライアントさんが一番上にいて、デザイナーはクライアントさんの意見を反映しながら仕事を進めないといけないので、非常に満足度の高い自信作でも却下ということがしょっちゅうありました。だから、私がクライアントになりたいと思って、サンリオに転職しちゃいました(笑)。