株式会社資生堂
社会が求めるクリエイティブ力
小野健(視覚伝達デザイン学科卒業) × 小林麻紀 (視覚伝達デザイン学科卒業)

――今までの仕事のなかでとくに印象に残っている仕事はありますか?

小林 資生堂では1年半後のファッショントレンドを予測するというプロジェクトがあるのですが、そのプレゼンテーション用のスライドや動画、美術ボードの制作を入社1年目の時に担当したことは印象深かったです。資生堂のメーキップアーティストと、社会情勢やそれに伴う女性の気持ちの変化、また現在のファッショントレンドを参考にしながら、ユーザーに推奨すべき未来のトレンドを考えていくのですが、みんなで考えたふわっとしたイメージを具体的な形にしていくため、面白い反面とても苦労しました。

「キッザニア」の仕事も思い出深いですね。昨年から、小学校4年生をメインターゲットにした職業体験施設「キッザニア」に資生堂が出展していますが、わたしは店頭用のツールや、webサイトの制作に携わっています。例えば、お客さん役になる子どもへ渡す、化粧に関する正しい知識を提供するためのカードなどをデザインしています。楽しく知識を知ってもらうため、この世代の子どもたちの間で流行っている「アイカツ!」というカードゲームを意識して制作しました。10才の子どもの気持ちを想像することは難しかったですが、いろいろとリサーチをして作った結果、7種類あるカードを集めるために資生堂のブースに通ってくれる子もいて、とても感動しました。

――お二人は最初から広告に携わる部署に配属されたのですか?

小野 わたしも小林も、グラフィックデザイナーとして採用されました。資生堂にはこのほか、パッケージデザイナーとスペースデザイナー、フォトグラファー、コピーライターがいるのですが、わたしが入社した当時のグラフィックデザイナーは、本当にグラフィックデザインしか担当しなかったのです。しかし、わたしは資生堂のキャンペーン広告が好きで入社したので、どうしてもCMに携わりたかった。そこで、CMを中心に展開しているファイントイレタリー事業部の宣伝企画部に異動し、結果的には入社3年目から6年ほどキャリアを積みました。広告代理店のクリエイターの方や著名なクリエイティブディレクターの方々と一緒に多くの仕事をした経験は今に生きています。

なかでも、わたしが初めて任された『ティセラ』というシャンプーのCMは思い出深いですね。SPEEDの『White Love』やPUFFYの『これが私の生きる道』とタイアップしたのには理由があったんです。わたしが子どもの頃に憧れたCMは、ツイストの『燃えろいい女』やラッツ&スターの『め組の人』とタイアップしたCMなどでした。そこで、当時の気持ちを思い出しながら、意識して企画を考えました。わたしは子どもの頃、テレビでCMを眺めていて、ただモノが欲しいというだけではなく、勇気をもらったり希望をもらったり、「あんな素敵な生活がしたいな」、「あんな格好いい車に乗りたいな」と思ったり、CMを見ることであらゆる感情を抱いていました。ですから、“単純に世の中の人がドキドキするような気持ちで見てもらえるものを作りたい”という思いをいつでも強くもっています。

小林 たしかに小野さんの作ったCMは音楽が印象的ですよね。

小野 実は最近では、もう少し仕事の幅を広げ、クリエイティブディレクターだけでなく演出家もやったりしているんです。現在放映している『ANESSA』のCMは演出も担当しましたし、CMソングの作詞を手掛けたこともあります。今は、昔にやりたくてもできなかったことがやれるようになり、すごく楽しんでいる毎日です。

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