TOP > お知らせ > けやきの郷10周年記念事業で葉山登講師が講演
けやきの郷10周年記念式典の会場
2007(平成19)年5月27日、美術と福祉プログラムの受入施設であるけやきの郷(東京都小平市小川町1-485)が、10周年を迎え、武蔵野美術大学の葉山登講師が講演を行いました。
当日は、施設長が挨拶され、さらに事務長の講師紹介をうけて、葉山講師が講演を行いました。また行事では事例発表なども行われ、実りある行事となりました。
当日の葉山講師の講演の概要については、以下をご覧下さい。
講演する葉山登講師
後ろは昨年度の学生による展示パネル
【参考記事】
けやきの郷10周年記念行事講演
(2007年5月27日)
「福祉における美術の可能性について」
葉山 登(武蔵野美術大学 講師)
この度は、けやきの郷10周年記念行事にお招きいただきありがとうございます。「福祉における美術の可能性について」というテーマで下記のことを中心にお話しいたします。
草木染めの作品を説明する葉山登講師
1.はじめに けやきの郷とのご縁について
私とけやきの郷のご縁は、2000(平成12)年に武蔵野美術大学の「美術と福祉プログラム」を通して、けやきの郷で介護等体験を行う学生の事前事後の指導を行うことから始まりました。介護等体験法というのは、教員を志す学生に社会福祉関連施設での7日間の介護等体験を義務づけるもので、1998年に施行されました。武蔵野美術大学では、この施行を建学の精神である「真に人間的な自由に達するような美術教育」の実現と美術の可能性をひらく絶好のチャンスと捉え、小平市内の社会福祉施設に提携を呼びかけて、独自の「美術と福祉プログラム」を実施致しました。この呼びかけに応じていただいた施設の一つが、他ならぬ黎明会「けやきの郷」でした。以来2006年度までの9年間に、158名の学生がお世話になり、掛け替えのない体験をさせていただいております。今年度も23名の実習がすでに始まっております。
2006年度の介護等体験学生による展示パネルを説明する
2.福祉における美術の可能性について
・存在を認め、認め合うこと
私は、昭和56年から小学校・中学校・高校・大学などで美術教師をしています。さまざまな世代を対象に美術教育に携わっていると、私の存在を認めて欲しい、私を大切にして欲しい、私が私自身のことを大切だと思いたい、という児童・生徒・学生の切実な訴えを肌で感じさせられます。「存在を認める」という教育的課題は、教育ばかりではなく、福祉にも共通する課題です。それが個人の尊厳を守ることに他ならないからです。武蔵野美術大学の学生たちは、けやきの郷で、個人の尊厳を守る実際を学び、「存在を認める」ための美術の可能性を探っています。それは、人間の特徴や美術の特質ついて考えることに必然的に結びつきます。
・人間の特徴・美術の特質
みなさんは、人間の特徴をどのように捉えておられるでしょうか。また、美術の特質をどのように捉えていますか。今回のお話の主題は、美術の特質を活かして、人間の特徴を発揮させる実際についてです。作品の実物やスライドをご覧頂きながら、紹介したいと思っております。教育や福祉における美術の役割と可能性について具体的なイメージを提供できればと思います。
3.学生がけやきの郷で学んでいることの実際
さらに、武蔵野美術大学の学生が、けやきの郷での飾り付けや実習、交流企画を通してどんなことを学んでいるかについて、事前事後の指導をしている立場から述べたいと思っています。
そして今回お話しすることが、けやきの郷と武蔵野美術大学が共同で推し進めている「美術と福祉プログラム」のますます発展に繋がることを願っております。