素晴らしい冬晴れとなったこの日、岩室から総勢14名の方々が最終プレゼンテーションに参加するためムサビへ来校されました。今回のプレゼンテーションが行なわれる12号館8階には発表する作品を事前に展示し、到着した岩室の方々に見ていただく機会を作りました。
会場には道のチームが制作したメインストリートの模型や、地場産品チームの巨大なオブジェや椅子、陶磁やテキスタイル作品など様々な作品が並び、中間プレゼンテーションではスケッチやイメージ写真だったものを実物で見た岩室の方々も驚かれ、プレゼンテーションへの期待も膨らんだ様子でした。
各チームのプレゼンテーションに与えられた発表時間は15分。短い時間でどれだけ伝えられるか、内容だけでなくプレゼンテーションのテクニックも問われます。岩室の方々も真剣な様子で、会場は緊張した空気に包まれました。
「よりなれやへ、よりなれや!」勢い良く始まったコアグループのプレゼンテーション。「よりなれや」のロゴ・看板の提案、「i」マークと24節気色をアレンジした店員さんのエプロン・三角巾・Tシャツ、お土産袋や包装紙、レターセットや名刺、新たに出来上がったキャラクターをアレンジしたハンカチや下敷きなどたくさんのアイテムを提案しました。また、「どんなお土産があるとよいと思いますか?」という学生の質問に対しては「入浴剤が欲しい」と具体的な要望もあり、4月の訪問時にさらにアイテムを増やした展開を発表することになりました。
道の計画チームは岩室の景観を整えていくために、メインストリートを石畳にする、新しく立てる建築物を統一する、一方通行とし余裕をもった植栽計画をする、電柱の地中化というガイドラインを作成しました。それらをイメージスケッチ、模型を使って表現し、さらに人々が集う足湯のある街角広場の提案も行ないました。街角広場のイメージとして和風の番傘を用意し、イメージがより伝わるように工夫しました。また、矢川は両岸を歩けるようにし、桜を植栽について提案しました。
光のチームは視察で行なった行灯と提灯の実験について報告を行ないました。その後、それらの結果を活かして、岩室の今後30年間の照明計画を3段階で提案しました。まず2010年までに温泉街に提灯を定着させて、その後2020年までに街路灯や行灯を使ったメインストリートの整備、さらに2030年までに下の堤、霊雁の湯などの整備を行なう提案をしました。また、それらの計画が実現したときの様子を想い描きやすいように、観光客の目線で作成したオリジナルの物語を朗読しました。岩室の方からは、行灯や街路灯について提案された時間によって切り替える方法や、下の堤の提案は近い将来に実現可能であるというご意見をいただけました。
地場産品チームは木工、陶磁、テキスタイル専攻の混合チーム。統一したテーマを岩室の「華」とし、温泉で使用するための湯気をイメージした脱衣かご、お客さんと岩室とのつながりをイメージしたお風呂椅子、温泉に浮かぶ焼き物の酒器、岩室の産物がモチーフの模様を染めパッチワークにした浴衣、浴衣を着て美しく座る事のできる椅子、岩室の土を使って焼いた花器、稲穂をイメージした巨大な木のオブジェを提案しました。岩室の方々からは、それぞれの作品について強度や価格など具体的な意見が出て、実際に使用できる可能性もあるという嬉しい反応をいただけました。
サイン計画チームは岩室のマークについて「雁」と「i」をモチーフとした最終の2案を提案しました。「i」はやわらかさを加えて観光複合施設のマークとすることになり、「雁」は岩室のマークとしてロゴタイプとの組み合わせも調整しました。「雁」のマークには丸いバージョンと波を5列並べた2つのバージョンを提案し、今後はどちらかに決定していきます。また、サイン計画については、新しい標識を模型を使って提案し、観光客向けのマップも作成しました。岩室の方からは、マークのディテールについてや、マップではもっと広範囲で岩室を紹介して欲しいとのご意見、またバイパスが出来たときの石畳の範囲なども積極的に提案して欲しいというご意見がありました。
ワークショップ計画チームは岩室で行なったワークショップの効果と今後の企画をリーフレットにまとめました。視察調査によって見つけた世代間のコミュニケーション不足を問題点にあげ、その交流の場として「御神燈」を中学生とお年寄りとで一緒に制作するワークショップを企画しました。このワークショップの効果を利用することで、岩室の新たな魅力や岩室らしさを発見し、お互いに共有することができます。今後はこういった活動が岩室に定着するように、現在行なわれている「ほたる祭り」での灯籠づくりと、「岩室温泉祭り」での御神燈の絵付けについての企画を提案しました。
サウンドスケープ計画チームは視察調査から検討を重ね、岩室の「音」の保存と再生をキーワードとしました。それらを実現し、岩室の「音」にもっと感心を持ってもらえるように『からころマップ』と、下駄の音を温泉街に響かせるための企画を提案しました。マップには岩室の「音」スポットで聞いた音を、観光客が実際に聞いて書き込めるように工夫し、また良寛様の俳句をヒントに観光客が作成する「音俳句」や「クーポン」なども盛り込みました。また、新潟にある小林履物店さんのご協力で、音を楽しむため素材を検討し、お米をモチーフにデザインした「下駄」も制作、発表しました。
メディアデザインチームは今後の岩室での発行物について提案しました。すでに発行されている「広報いわむろ」「西蒲だより」の調査を行ない、福島県の例をとって地域住民向けのメディアの必要性や役割の調査結果を発表しました。また、視察での取材から、岩室の組織の横のつながりの希薄さを見つけだし、その問題点を地域メディアによって解決する提案を行ないました。来年度も続くこのチームは、今後そういった新しいメディアを立ち上げるための提案を行なう予定です。
充実したプレゼンテーションがやっと終了し、談話室MAUにて懇親会が行なわれました。学生にも岩室の方々にも笑顔がこぼれ、リラックスした雰囲気の中で、それぞれの提案についての感想など意見交換を行なうことができました。
こうして長かった1日が終了しました。学生が提案した様々なアイデアが岩室でどう展開していくのか、今後の課題はまだまだ山積みですが、ひとまず学生のみなさん、いわむろみらい研究会のみなさん、半年間お疲れさまでした!
平成19年度前期プロジェクトブック(PDF 1.7MB)
平成19年度後期プロジェクトブック(PDF 4.7MB)