2008.11.22(sat)
公開シンポジウム「竹の造形・その未来」1

日時:11月22日(土) 13:00-16:00
場所:武蔵野美術大学1号館103教師
パネリスト:カスパー=シュワーベ氏(デザインサイエンティスト、倉敷芸術科学大学)、日詰明男氏(造形作家)、板東孝明(基礎デザイン学科)、宮島慎吾(基礎デザイン学科)、宮下勇(建築学科)、伊藤真一(工芸工業デザイン学科)

司会である板東教授より開会が告げられ、甲田学長より開会の挨拶、続いてパネリストの紹介があった。一人目のゲスト、倉敷芸術科学大学で教鞭をとるカスパー=シュワーベ氏。スイス出身。科学、芸術、デザインを独学で学び、グラフィックデザインと彫刻を本業とする。2002年に来日し、科学博覧会のディレクターなども務め、デザインサイエンスを提唱し、国際的に活躍。前日の21日には基礎デザイン学科主催課外講座「形マジック」を講演し、氏が開発したチタン材による4m径の120本テンセグリティモデルを学生とワークショップで組み立てた。

二人目のゲスト、日詰明男氏は未来の空間造形を探索する建築家、造形作家。氏はペンローズの平面充填、フィボナッチ数列における準周期構造、そして空間構造をシステム化する試みを五勾(ごまがり)から六勾(むまがり)、プレアデスという一連の星形多面体の発見へとつなげている。また音楽と建築の統合をめざし、幾何学の数式というテクストの領域を超え、自然の空間構造と響き合う極めて未来的な美学を獲得している。10日から22日までの2週間、氏は本学においてワークショップをおこなった。そこでは理論や背景に関する講義を元に、ワークショップとしてフィボナッチ数列による竹の茶室、トンネルを制作し、同時にフィボナッチ音楽の演奏を学生とおこなった。

続いて本プロジェクト教員4名の紹介後、プロジェクトテーマに関して教員各自5分程度のプレゼンテーションへうつった。

板東教授:
基礎デザイン学科で行っている授業は、シナジェティクスという幾何学構造を使った新しい空間づくりをテーマとし、ワークショップ形式で学生とともに共同作業を行っています。具体的には軽量多面体ドームによる緊急避難施設及び展示空間づくりです。 デザイナーはともすれば、かたちや色などの個性化に凝り、何か付加価値の高いものをつくらないといけないと思い込みがちですが、他方、災害などの緊急時にデザインを通して必要なものを提案するといった社会貢献も21世紀のデザイナーの責務であると思っています。それを具体的に体験するために竹を用いてドームをつくるということを、授業を通して提案しています。
授業においては20世紀の知の巨人と言われるR. バックミンスター・フラーの提唱したジオデシックドームを竹でできないかと考え、「bamboo geodesic dome project」として取り組んでいます。写真は、現在10号館前芝生に立っている直径8mの半球ドーム組立の様子です。学生は竹で身の丈をはるかに超えるものをつくった経験はないと思います。このドームの場合は専門家が足場を組んで組み立てるのではなく、ご覧のように専門知識や技術がなくても大勢で共同作業をすることにより、手と簡単な工具で組み上げることができます。手と簡単な道具だけでつくることができます。

 

21世紀に望まれるデザイナー像は、例えばこのようなドーム建設の知恵を身につけ、被災地で実際に住民達と生きのびるために必要なものを、つくりあげていくようなタフな造形指導者だと思っています。おしゃれな事務所でコンピューターを用いて、きれいで洗練されたアプリケーションをつくっているだけのようなデザイナーではダメだと思うのです。今お見せしているドームはまだまだジョイントの部分など改良の余地が多々あります。このワークショップで大切なことはドームをつくるということよりも、そういった経験を元にして学科や専門の分野を超えて、生のためのデザイン学、知恵を身につけ活用していくことです。また僕自身、このプロジェクトを通して現地の役に立ちたいと思っています。来年3月にはインドネシアのバンドゥン工科大学にドームを持っていき、現地学生と一緒につくる予定です。そこで各自がより良い竹の利用法を考え、提案し合って欲しいと思っています。

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